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Fukabori fm ep9のメモ「エンプラ業界でアジャイルになるため...」

fukabori.fm

エンジニア向けポッドキャストのFukabori.fmのこちらのエピソードを聞いていてうなずきが止まらなかったので、紹介と整理のための要約、所感など。

ラジオのゲストはKDDIの大橋さんという方で、KDDIアジャイル開発センターや社内勉強会を推進する過程で得られたプラクティスの紹介という内容。「大企業でアジャイル」というタイトルだが中身としてはアジャイルや大企業に限らず「古い体質の企業に新しい文化を導入する」際に参考になる話ばかり。
Web系やメガベンチャーのキラキラした事例ではなく、泥臭く文化や制度と戦って得てきた教訓という感じで、納得感がすごい。

以下は実際にラジオで話されていた言葉ではなく、私なりに解釈した内容。

新しい文化を始めるために

Small start, small win.

クラウドアジャイルなど新しい文化をいきなり大々的に始めるのは難しい。
現状のルールをベースに、特定プロジェクトで一部の特例を認めてもらう形だと始めやすい。

Andrew Ngも「企業へのAI導入方法」的な記事で同じくSmall start, small winと書いている。
他にも多くの人が同じようなことを言っている。
小さく始めて成功事例を重ね、ノウハウの蓄積と社内外へのアピールを行うのは鉄則らしい。

landing.ai

社内のルールの再解釈

大企業だとあらゆる業務に対して重厚な規約が存在してガチガチに縛られている事が多い。
新しい文化を導入するにあたって規約自体を変更しようとすると大事になってしまって前進できない。
そのため、規約自体を変えるのではなく規約の解釈を変えられないか試みる。

多くの規約は過去の失敗が起因となっており、同じ轍を踏まないようにルール化されていく。
規約上は「どのようにやるべし」というHowだけが書かれていて原因となったWhyが書かれていないことが多い。 新文化の導入にあたって障害となる規約に対して、規約が生まれたWhyを考えて「当時はそうだったが、今の技術に当てはめると・・・」として解釈し直し、新しい文化が規約に反していないことを明示する。 古い企業だと当時を知るベテランが残っている可能性が高い。

加速させるために

熱意のある人にアプローチする。

熱意のある人に魅力的だと思ってもらえれば、その人は次の熱意ある人を連れてきてくれる。
本格採用を検討するタイミングでは社内ですでに周知されていて口添えしてもらえるような状況が理想的。

「参加させられる人」を作らない、呼ばない。

モチベーション低い人が増えるとせっかく燃え始めた火が弱まり、最悪の場合鎮火してしまう。
「月1回は勉強会に参加すること」のようなルール化は最悪。

社外発表をする

社外に発表することで、社内外から「こういうことに取り組んでいる会社」としての認知度が高まる。
それによって社内の活動を知って手を挙げる人が出てくる、あるいは会社自体似興味を持ってくれる人が出てくる。
(社内の活動について社外の人のほうが詳しい、という場合もある。)

技術者コミュニティに訴える

新しい文化の導入にあたって、社外から有識者や熱意ある技術者を採用したい。
技術者を採用するなら技術者向けのコミュニティに訴える必要がある。
勉強会での登壇、スポンサー、技術系サイトへの掲載など。
逆に一般向けのニュースメディアなどに載っても意味がない。

これはそのとおりだと思う。技術系サイトで事例と内部の技術紹介とかされていると興味を持つが、日経新聞で「〇〇社、〜〜事業を本格化!」とか書かれていても、「はいはいメディア向けのキレイに飾ったハリボテね」と思うことも多々ある。事実そういう場合も多い。。。

その他プラクティス

わかりやすい名前をつける

ラジオの事例では「KDDIアジャイル開発センター」。
オシャレな名前ではないが、何をしている組織なのか誰が見ても一目瞭然。
社内外からの認知度を高めるためには分かりやすい名前であることに大きな意味がある。
その名前のままニュースの見出しに使われるような分かりやすい名前をつけるべき。

グレーゾーンでゲリラしない

新しい技術・文化が社内規約に対してグレーな場合「黙ってこっそり実行」はやらない。
ゲリラでやって成功すれば成功事例として議論できるかもしれないが、失敗した場合はもともとグレーで済んでいたところが、完全な黒になりかねない。 取り組みを始めるにあたって、グレーであること自体を明言して了解をとって進めたほうが良い。

所感

上記の内容の他にも、新技術導入を進められるようなエンジニアに対する待遇や人事制度、キャリアなど「大企業のエンジニア」について多くのことに言及されている。 最初に書いたとおり泥臭い戦いで得てきたノウハウと言う感じで、社内での新しい取り組みに苦戦している方やこれからチャレンジしたい方にとって実用性抜群のプラクティス集だと思う.

私も前職で下手くそなりに新技術の取り入れを訴えてみたが結果何ひとつ実現できなかった(結果、転職を決意)という経験があるが、もっと早くこのラジオの話を聞いていたらなにか少しは違っていたかも。
企業の大小や新旧を問わず、社内でなにかチャレンジしようとしている方にはぜひ一度聞いてもらいたい。